☆ 政策金利 ☆

井出薫

 日銀が9月17日、18日の金融政策決定会合で政策金利を引き上げるとの観測が強まり急激な円高が進んでいる。6月に1%に引き上げた政策金利が1.25%になる見通しで、3カ月という短期間での引き上げは今後の引き上げペースの加速を予感させる。来年末には2.25%まで上がると予想する者もいる。

 背景には欧米との金利差がある。それが円安=輸入品価格の上昇を引き起こし物価高に繋がっている。ドル高を嫌う米国が日本の金融緩和政策の転換を強く求めていることも大きい。むしろこちらの方が円高に寄与するところが大きいかもしれない。政策金利の引き上げを嫌う高市首相も米国から政策転換を求められては日銀の政策金利引き上げに反対することはできない。

 しかし、現時点で政策金利を引き上げることが果たして本当に日本経済をよくするのだろうか。物価上昇は続いているが昨年よりは落ち着いてきている。物価高対策を求める声は大きいが、多分にメディアやネットの情報に踊らされている感がある。利上げにより物価上昇が収まり消費が活性化すれば日本経済にプラスになる。しかし企業への貸出金利が上がり経営に悪影響を及ぼし、住宅ローンの金利が上がり家計を圧迫するというデメリットもある。為替レートが140円台半ばくらいまでならば輸出産業への影響は小さいが、それを超えて円高になれば顕著な影響が現れ景気後退の懸念がでてくる。インバウンド需要の後退も想定される。現状では消費は物価よりも賃金に影響される傾向が強く、政策金利の引き上げが消費の大幅な活性化に繋がるとは考えにくい。それでも利上げのメリットはデメリットを上回ると言えるのだろうか。中立金利の目安は1.5%から2%程度とみる向きが多い。だとすると、今回利上げし1.25%にしてもまだ金融は緩和状態だということになる。だが、中立金利に近づき金融緩和の転換点に向かっていることは間違いない。

 高市政権は責任ある積極財政を旗頭に掲げ日本経済を力強い成長軌道に乗せることを公約している。成長分野への積極的な投資を含む骨太の方針が公表され各省庁はそれを受けて予算計上に勤しんでいる。これは力強い経済成長を目指す以上当然の流れだと言えよう。しかし、その一方で政策金利を上げることは経済成長の足を引っ張る恐れがある。アベノミクスが始まったあと、インフレ目標2%に到達する前に予定通り消費税が引き上げられた。これに対して当時アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだと批判し消費税引き上げを延期するよう求める声があった。果たしてそれが適切な要求だった否かは分からない。しかし消費税増税で消費が冷え込みアベノミクスが掲げるインフレ率2%が実現しなかったのは事実だ。今回も同じ轍を踏むことにならないだろうか。政府と日銀には慎重な議論を望みたい。また、米国との関係は重要だが米国の思惑に振り回されないでもらいたい。


(2026/9/10記)


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