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井出薫
今年は社民党(旧社会党)結成80年に当たる。同党は90年代初頭まで戦後一貫して自民に次ぐ議席数を誇る最大野党だった。今ならば極左と保守層から批判されるような政策を掲げながらも多くの市民の支持を得ていた。しかし、今や見る影もない。唯一の衆院議員だった新垣副党首が離党し所属衆院議員はゼロになった。50年代から70年代には「高齢者は自民、若者は社会か共産」、「都市部は社会や共産が強く、地方は自民が強い」と言われたものだった。しかし、今では都市部の若者で社民党を支持する者は皆無に近い。むしろ地方の高齢層で僅かに支持者がいるに過ぎない。 なぜこのような憂き目にあっているのか。その理由は時代の流れに適う活動が出来ていないことに尽きる。自民党も55年結成以来の老舗政党で時代にそぐわない旧態依然の体質を色濃く残すが、政権政党であるがゆえに否応なく国内外の変化に適応せざるをえず、結果的に辛うじて時代に合った活動をすることができている。 「憲法を守り外交で平和を実現する。防衛費増強ではなく防衛費削減で減税を行う」福島党首は街頭演説で聴衆にこう訴える。だが市民には響かない。それが理想であることは多くの者が認める。しかし、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻、世界で絶えることのない内戦やテロ、こういった現実の前で、社民党は何をするのか、何ができるのか、全く語ろうとしない。いや、理念を振りかざすだけで研究も議論もしていないから語ることができないというのが真実だろう。 平和、民主、人権、法の支配、多様性の承認など社民党の主張には今でも大いに意義がある。日本だけではなく、欧米諸国でも右派が台頭している現状を考えると、社民党的なものの重要性はむしろ増している。だが、選挙で敗北が続いているのに敗北の原因の総括ができず再生への道を示すこともできない。福島党首の交代の声も出てこない。これでは党勢回復の見込みはない。もしまだやる気があるのであれば、執行部を一新し若手を登用し党の基本理念と運動方針を根底から見直し作り替える必要がある。やる気もなければ、その力もないのであれば、解党した方がよい。 了
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