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井出薫
一般会計予算で額が一番多いのが社会保障費で38兆円を超えている。少子高齢化の進展で社会保障費は増大し続け、財政赤字の最大の要因になっている。 対策は3つある。社会保障費の抑制、増税、経済成長実現で税収の自然増を図り社会保障を充実させる、この3つだ。 社会保障費の抑制は国民生活に多大な悪影響を与える。公的年金は物価高もあり現在でも老後の生活を支えるには十分ではない。病院の8割は赤字経営となっている。筆者が暮らす基礎自治体では十数年前までは救急救命の拠点病院の他に救急病院が5つあった。だが今では1つに減っている。介護職の不足は深刻で事業継続が困難になっている施設が多数ある。大卒で大企業に就職すれば30代半ばまでに年収は1千万を超える。しかし介護職員は30年務めても1千万に届く者は少ない。これでは介護職を希望する若者は増えない。同じことが保育職にも言える。医師は給与は高いが救急病院の医師は休む暇がなく恒常的に過重労働になっている。看護師も同じ環境にあり、しかも医師より給与が低い。社会保障に欠かせない人材を確保するためには給与の引き上げ、労働環境の改善が不可欠で、財政赤字を理由に社会保障費を抑制し続けたら医療崩壊、介護崩壊が起きる。そうなれば政府は再建のために莫大な財政出動が必要になり結局財政赤字が拡大する。 増税は最も分かりやすい政策だが、経済格差が拡大している現在、低所得層や中間層への増税は認められない。それゆえ大企業や高額所得者・大資産家への課税強化が不可欠となる。所得税と住民税を合わせた最高税率は現在55%だが、これをたとえば80%に引き上げることなどが一案となる。無謀だと思われるかもしれないが、40年前までは80%を超えていた。その他、法人税率引き上げ、資産税強化、高額の金融所得の分離課税廃止などの政策が考えられる。この政策は富の再分配を促し格差是正にもなる。だが、経済への悪影響が大きいと各方面から反対の声が上がるだろうし、グローバル経済の下、大企業や富裕層への大規模な課税強化が資本の流出など経済に悪影響を与える可能性は否定できない。それゆえ慎重に実施する必要がある。 積極財政により経済成長を促し、増税なしで社会保障充実を実現できれば望ましい。恒常的に実質経済成長率3%、物価上昇率2%、名目成長率5%を実現できれば、14年で名目GDPは倍になる。こうなれば税収の自然増で財政状態は改善し社会保障の充実も可能となる。だが、今の少子高齢化が進む日本でそれが可能かというと難しい。積極財政には高インフレ、財政悪化懸念による円と国債の暴落というリスクが付き纏う。これを回避することは容易いことではない。 社会保障費の抑制は人々の生活を脅かし社会の混乱を招く。大企業や富裕層の課税強化を行ないつつ積極財政で経済成長を促進すること、つまり案2と3を併用することで社会保障を維持拡充することが唯一の道だと考える。もちろん容易ではない。だが、他によい方法はない。 了
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