☆ 篠山紀信氏を悼む ☆


 1月4日、写真家の篠山紀信氏がお亡くなりになった。心からご冥福をお祈りする。

 学生時代、氏の「激写」が掲載される月二回発行の雑誌『GORO』が店頭に並ぶ日をわくわくしながら待っていたことを思い出す。筆者だけではなく、同年代の若い男の多くが同じ思いだった。店頭に並ぶ日、書店に直行するのだが、レジにいる書店員が若い女性だったりすると、顔を合わせるのが一寸恥ずかしく男性店員に代る時を待つことがあった。おかげで売り切れになって地団駄を踏んだことがあったことを思い出す。

 女性のヌードやセミヌード写真が有名だが、氏は様々なジャンルの写真を残しており、そのどれもが親しみやすく、見ていて楽しいものだった。歌舞伎役者として一時代を画した玉三郎の写真は大きな話題になった。建築物、都市と地方、その景観と佇む人々、テーマパークなど様々な人と物が被写体になった。『三島由紀夫の家』に掲載された写真も氏によるものだった。芸術的センスに乏しい筆者には、氏の写真の芸術性について論じることはできない。だが、氏の写真が人を楽しませるものであったことは絶対に間違いない。

 篠山氏の妻、南沙織さんも忘れがたい。「女性アイドルの時代」というと松田聖子さんを筆頭とする80年代と答えるのが定番になっている。だが、70年代初頭から時代は始まっており、そのトップバッターの一人が南沙織さんだった。デビュー曲『17才』はアイドル史に残る名曲で今でも耳にする。今はさぞかし落胆されていることだろうが、悲しみを乗り越えて、この先も幸福な人生を送られることを心からお祈りする。

 篠山紀信氏は亡くなったが、その作品はこれからも多くの人々の心に残り続ける。


(2024/1/17記)


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