☆ スピードガンと由規の未来 ☆


 8月26日の横浜戦でヤクルトスワローズの由規が日本人最速の161キロをマークした。ファンとして嬉しいはずなのだが正直微妙だ。

 かつての剛球投手山口高志や伊良部を記憶している者として、由規の球が彼らより速いとは到底思えない。山口の剛球はバットにかすりもしなかった。伊良部の速球は目の前を新幹線が通り過ぎるようなものだと恐れられた。彼らの球と比較すると、由規の直球は速い部類だという程度でしかない。事実、由規が直球で三振を取れることは少ない。打撃技術が進歩したとは言え、今の由規がかつての山口や伊良部より速いはずはなく、記録はスピードガンの悪戯に過ぎないと思われる。以前から神宮球場のスピードガンの表示は他球場よりも高く出ると言われてきた。実際、記録を見ると、他の球場では由規の球速は150キロ+アルファ程度でしかない。神宮球場を本拠地とする東京六大学野球や東都六大学野球で、速球で鳴らした投手がプロ入りしてからパッとしないことが多いのも、過大な数字を弾き出す神宮球場のスピードガンのお陰で過大評価されたためではないだろうか。スピードガン表示は野球観戦の楽しみの一つだが、測定機器の精度を高め、同時にテレビ、ラジオ、新聞などでスピードガンの仕組みや精度についてもっと丁寧に説明する必要があると思う。

 さらに心配なのは由規が不正確なスピードガンの記録に拘りを持っていることだ。161キロを記録したとは言え、初回に3点を先取され敗戦投手になっている。ところが161キロという数字を喜び、初回の3点と敗戦を忘れているように見える。由規は純真な選手で、そこがファンに愛される所以なのだが、球界を代表する投手になるためにもスピードガンではなく勝負に拘って欲しい。

 たとえば、由規にはこう言ってもらいたい。「160を超えた。だから、もう数字と遊ぶのは終わりにする。これからは藤川さんのようにストレート3球で三振を奪える投手を目指す。」そのとき初めて、由規は球界を代表する投手への切符を手に入れる。それは同時にヤクルトが優勝争いのできるチームへと脱皮することを意味する。その日が早く来ることを祈っている。


(H22/8/28記)


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